4/30 Walking hopeless

どうしようもないわたしが歩いてゐる(山頭火)

○今週のアニメ「RD潜脳調査室」

 「エロス&タナトスの快楽よりも美少女の純情のほうが強いのだ!」という萌え原理主義な主張を微妙な萌え絵と冷静な演出で淡々と語られましても……根がオタクなんだからさ、表現もオタク的手法でやってくれればよろしいかと思うのですが。AIRアニメ版最終回か、CLANNADアニメ版の風子のエピソードでも見て反省していただきたい。

○今週のアニメ「Vガンダム − 天使の輪の下で」

 ウッソ君が「裸のお姉さんによる特攻」という品性下劣な作戦を遂行したカテジナさんにさすがにドン引きし、決別を果たす回であります。

 捨てられたカテジナさんは、自らのアイデンティティが「ウッソという健やかで強い存在」によって維持されていたことに今更気付きます。彼女はウッソの持つ「少年の健やかさ・強さ」に惹かれつつも、それが自らの抱える歪み(その歪みの根本原因がアニメではあまり描かれていないのですが、原作小説では父親が原因としてにおわされている)や弱さをおのずと照らし出すがゆえに憎むわけです。それが故に彼女はウッソを必死で超えようと頑張るわけですが、そもそもウッソは戦争マニアの夫婦に英才教育を受けた超天才少年なので彼を超えることはできません^;

 ウッソの強さに憧れ、ウッソを乗り越えたいと願いつつもそれができず、その故にウッソを憎む。しかしそれでいてウッソに「好かれている」という事実が彼女の支えになっている。このウッソへの激しい愛憎がカテジナさんを引き裂き、彼女をどんどんエキセントリックにしていくのであります。しかも、ウッソは彼女にとって「父なるもの/男」の象徴なので、こだわらずにはいられません。最終回の狂気もこのように考えると、ある程度納得いくものなのであります。

 最終回で語られますがカテジナは、ウッソに求めている「父なるもの/男」の役割をクロノクルに代行させようと思っていたわけです。しかし、クロノクルは(これまた最終回で明らかになりますが)マリア命のシスコン君であり、階級こそ高いものの凡庸な存在でしかない。それ相応に屈折しており、ウッソの持つ健やかさもない。そのためカテジナさんは結局、クロノクルを見限り、最終回でウッソのもとに走る(ストーキングという方法ですが^;)わけです。

 しかし、本編を見ているだけだとなかなか、こういうカテジナさんの狂気の過程というのが明確に見えてこないのも事実でありまして、彼女のモンスター化はかなり「唐突」の感が否めませんでした。なぜこうした説明不足が生じてしまったかというと、カテジナさんのモンスター化は必ずしも当初の予定にはなかったものだったから、というのが正解ではないかと管理人は思っております。

 富野御大的にはVガンの核になるキャラクターは「リガ・ミリティア=マーベット/ザンスカール=ファラ」だったはずです。孤独(宇宙空間ひとりぼっちの刑)とエロス(原作小説参照^;)とタナトス(ギロチン処刑人)に魅入られた女であるファラこそがザンスカール軍の女性によって表象される「母になれない女の末路」の究極形なのであります。構成的には最終回のクライマックスでカテジナさんが占めるべき位置を、本当はファラが占めていなければいけなかったのではないでしょうか。

 ところが、ファラはさっさとやっつけられてしまって退場してしまうわけです。そのため、やむなく残っていたカテジナをラスボスとして急遽モンスター化させなければいけなくなってしまったのではないでしょうか。そうした「急ごしらえのラスボス」だったがゆえに、カテジナの狂気の過程は明確に描かれず、唐突な印象を与えてしまっているように思います。また、彼女をラスボスにすることによってVガンダムという作品全体のテーマ性みたいなものも、むしろ不鮮明になってしまったように思います。

 カテジナをラスボスにするには、ファラからカテジナへの「禅譲」のようなシーンがあったほうがよかったかと思うのですが、あまりそういうものは見当たりません。ルペシノ・ファラ・カテジナという「ザンスカール三大狂女」は同僚としてのつながり以上には連続性が与えられませんでした。ここら辺にもっと連続性やつながりを見せることができれば、わかりやすくなったのではないかと思います。こうしたところもVガンダムという作品の持つ「粗さ」であるといえましょう。

 しかし、その「粗さ」がカテジナというキャラクターをここまで成長させたのも事実でありまして、一概に「悪い」とはいえないのであります。

 あ、そういえばこの回、ユカさんが死んだんだ。彼女についてはいずれまた^;

○二次元の勝利

三次元

二次元

 両方平面だから二次元だろ、とかそういう瑣末なツッコミはしないように^;

○水の茶室

こちら
 NHK教育の日曜美術館でやってましたが、現代的に侘び寂びしててカッコエエのです。

○温情主義が却って貧者の首を絞める

「ワイドショーの正義」は錯覚

 「ブンガク」ではなく「算数」でいかにモノを考えられるかということであります。我が国に関していえば不当に「ブンガク」が幅を利かせすぎている状況なので、もっとこの記事のような「算数」の権威を高めていく必要があると思うのですが、とはいえ「算数」だけで考えると人間「キモチが良くならない」「楽しくならない」というのも事実でありまして。


4/29 wandering swan

白鳥は哀しからずや空の青 海のあおにも染まずただよふ(若山牧水)

 鳥インフルエンザ。

○workshop模様替え中

 漫画キネマ4公開に合わせて、本家サイトworkshopも模様替えしております。未読作品などありましたら是非。

○アニメ「紅」第四話

 まあ絵が動いてるだけで面白いアニメではあるので。Aパートの暴力沙汰は昼飯食いながら見るには気ぃ悪い。「気ぃ悪い暴力シーン」を演出して見せるってのは立派な才能ですが。

○アニメ「コードギアス」第3話

 浪花節で弟をたらし込む展開はかなりいただけなかったが最後の最後の「使い倒してボロ雑巾のように捨ててやる!」という台詞があまりにすばらしかったので許す。ルルーシュ君は爽快に性格が悪くて良いキャラですなあ。

○映画「傷城−傷だらけの男達」

 トニー・レオン先生は背ぇ高くないんだけど何着ても似合うよなあ。デザイン的には結構プレーンなものなのに彼が着てると「いいなあ、ああいうのほしい」と思えてしまうという。スタイルがいいのかなあ。でもそんなに足長くないしなあ(失礼)。まあ特注ジャストフィットなんでしょうけどね。あと金城武は日本語喋らないと本当に良い役者。日本語じゃないと、あの軽い感じの声や台詞回しも良い具合に聞こえる。意味がわからないってのは時に良いこともあるのですよ。

 さて、センス最悪の邦題はともかく、この映画は香港映画に新時代をもたらした名作「インファナル・アフェア」のスタッフの新作なのであります。印象としては「インファナル・アフェアにおけるアンディ・ラウの役回りをトニー・レオンにやらせた」映画という感じです。ドラマ的にはとてもよいものだったのですが、脚本と演出が少々「凝りすぎ」の感がある。それが、このスタッフ達のよさでもあるのだが、今回の場合はやや裏目に出たのではないか。

 作り手としては「刑事コロンボ」型「古畑任三郎」型の推理ドラマにひとひねり加えて見せたかったのだと思う。コロンボ同様、犯人が最初から観客に提示される形式なのだが、あまりに意外な人物のため観客は「え?本当に彼が犯人なの?」という気持ちを持ったまま映画を見ることになる。また、探偵役が犯人ときわめて近く、親しい関係なために調査や謎解きにも常に緊張感があり、「騙しあい」「探りあい」の面白さも味わわせてくれる。

 探偵役の金城武と共に観客は犯人の偽装工作やアリバイを崩していくのだが、正直見ていて「なるほど、これでアリバイが崩れるのか!」「そうか、これが偽装工作のトリックか!」とスッキリ納得できないまま最後になだれこんでいってしまう感じがあって、それが残念だった。いちおう後から見直したら説明されていて、なるほどね、とは思うので脚本が悪いわけではなく、単に管理人の頭が悪いだけなんだが^;ハイテンポ高密度な凝ったシナリオ、凝った演出が少し仇になったのではないかと思った。

 物語や人物達の悲壮なドラマはとてもしっかりしていて引き込まれる。だからそんなに凝らないで「謎」を整理された形で提示し、「解決」も順を追って提示していけばよかったのではないかと思った。でもトニー・レオン先生を筆頭に俳優・女優含めてみんなすばらしかったので許す。特に金城武の恋人役の女の子が、出番少ない割に存在感と愛嬌があって大変よろしかったですよ。相変わらず映像奇麗ですし。あと冒頭のカーチェイスシーンが凄く出来が良い。別にそれほど新しいことしてるわけじゃないんだけど映像のつなぎ方が流麗だし、音楽との合わせ方も渋くて凄いカッコイイのですよ。これから世界中でマネされるんじゃないかなあ。

○野矢茂樹「論理トレーニング101題」

 随分前に購入したのにほうったらかしにしていた野矢先生の論理トレーニングを、いっちょ腰すえてやろうかと決意。といっても、どうせ一気にやったら途中で挫折するので1日1問やってく予定。とりあえず3問目にしてようやく正解。論理的に考えるの苦手だからなあ。


4/27 never sully my philosophy

汚さじと思う御法のともすれば 世渡るはしとなるぞかなしき(慈鎮和尚)

○読者アンケートにお答えいただいた皆様

 本当にありがとうございました。読んでいただいた方のひとこと以上に励みになるものはありません。気合を入れて次作の製作に入れます。

○「へうげもの」6巻

 「一笑一笑」に「なんつって」と訳をつけるのはわかりやすくていいなあ。

 この巻は結構「茶道」「侘び数寄」がメインに語られていて良かった。あまり古典的な「サラリーマン向け戦国武将立身出世モノ」の方向性にいってほしくないなあと思ってたもので。というか、現代のような右肩下がり時代のサラリーマンにとっては織部的な人生(仕事ではそこそこ立身出世し、趣味をしっかり極めて名を成す)みたいなほうが、むしろ憧れなんじゃないか。

 物語のほうはいよいよ大徳寺山門の話がでてきて「利休切腹カウントダウン開始だなあ」と思いながらしみじみ読む。もっともこのあと北条攻めがあるから、切腹関連の話は8巻あたりから本格化するのかな。織部の本格的活躍は利休が亡くなった後。その織部の話はともかく、6巻ででてくる利休自身のエピソード(古渓和尚の墨蹟を使って茶会を開くとか、「侘び数寄」のフリをする茶人に失望する話とか)は史料どおりのものが結構多かったですな。

 伝記などを読んでいても、大徳寺事件がおきるあたりの利休の言動はそれまでの利休の言動とは明らかに違ったものになっていて、その背後に何があったんだろうと思わされることが多いのだが、この漫画はそれをうまく利休自身のドラマとして説明してくれて、なるほどなあと感心させられます。よく考えられている。

 上の慈鎮和尚の歌は、利休がよく口ずさんでいたと言われるもの。御法というのは和尚の場合は仏法なのだろうが、利休の場合は「茶道の哲学・美学・理念」のようなものになるのだろうか(まあ茶道も禅なしには語れないので仏法と言ってしまってもいいっちゃいいのかもしれんのだけど)。それを大切にしたい、汚したくないとは思うものの、同時にそれを世渡りの「はし(箸あるいは橋?)」、世渡りのための道具にしてしまう(そうすることによって、妥協してしまったり、自分の哲学が汚れてしまったと感じてしまうことがある)ことは悲しいことだなあという歌。好きなモノを仕事にする、自分の美学や理念を世に広める、というのはいつの時代もしんどいことだったわけですな。


4/25 mother is like a...

母って云ふものは不思議な強迫感にも似た、かなしいもので(永瀬清子「母」)

○漫画「キネマ4〜僕らは罪深いかわりに」公開

こちら

 本家サイトworkshopにて、十子氏との合作漫画シリーズ「キネマ」の最新作を公開。

 お暇な方はご一読いただければ幸いでございます。ひっそりと読者アンケートなどもございますので、よろしかったらポチッとボタンを押していたければと。

 毎度ながら情報過小な作品ですが、次回でこれまではっきりしなかった部分をある程度はっきりさせる予定であります。といっても、それほど大それた設定でもないのですが^;

 キネマはタイトルのとおり「映画」についての物語でして、今回は「西部劇」がテーマになっています。珍しく若い女性がメイン張ってますので、いつもより華やかです^;偶数回は女性が主役、みたいな^;

 いつもながら十子氏がとても気合の入った作画をしてくださいました。ありがとうございます。今回は特に絵的・映像的な演出はほぼ丸投げ状態に近い形でお任せしているのですが、これが吉と出ております。やはり管理人は絵にあまり余計な口出ししすぎないほうがいいなとつくづく思った次第であります^;

○アニメ 機動戦士Vガンダム 第48話「消える命 咲く命」

 シャクティの母・マリア(とタシロ閣下が)が死ぬ回。死ぬ前のシチュエーションやマリアのとる態度がウッソの母・ミウラの死に方の反復になっていることに今頃気付く。二人とも人質にとられた状態で「私を撃て」とウッソに命じている。マリアに対して「(女王としての)あなたの代わりは幾らでもいます。でもシャクティのお母さんはあなた一人なんです」と返すところに、同じシチュエーションで母を失ったウッソの痛みがにじみ出ている。

 マリアが殺されたのを見て逆上したウッソが生身のタシロにビームサーベルを向けてしまい、そんなことをしてしまう自分に動揺してしまうのだが、この「生身の人間をモビルスーツで殺してしまうことに動揺するウッソ」が次回の伏線になっていくんですなあ。これも今回見ててようやく気付いた。

 あと、この回で興味深いのはBパートのウッソとマーベットの会話。この部分、「マニア(オタク)の両親を持った子供の愚痴」として聞くと、なかなかアクチュアルなテーマを扱っていたのだなと感じる。富野御大や桶屋氏にしてみれば自分達の生み出したアニメがオタクを生み、そのオタクがいよいよ親となる時代がくることについて何か言わずにはいられなかったのでありましょうか。関係ないけど、このシーンで流れる主題歌のピアノバージョンがいいんだよねえ。

 それにしてもこの回は個々のシーンが密度があり、とてもドラマチックなのにあまりにテンポが良すぎる。本来、1時間かけてやらなければいけないものを無理矢理30分弱に圧縮してしまっている感じでもったいない。こういう「粗さ」がVガンの欠点でもあり魅力ともなっている。

○アニメ「図書館戦争」第三話

 設定の荒唐無稽さがやはり引っかかりますなあ。てっきり告白した男が戦死するとばっかり思ってたが、そこまで重い話にはしないのか^;

○アニメ「クリスタルブレイズ」第三話

 「ヒートガイジェイ」「黒の契約者」などを見ていたときも思ったのですが、こういうシティーハンター的なベタな「街(新宿的な)」を舞台にした作品は、もう何をどうやっても「古びて」見えてしまうのです。耐用年数が切れてしまっている感じというか。

 洋画ではたとえば「コラテラル」とかリアリティのある現代の「街」を描いていたし、日本でもアニメでは安部吉俊とか押井守とかの仕事、実写でも「下妻物語」だとか「池袋ウェストゲートパーク」だとか、「街」の描き方が色々模索されてるわけで。テレビアニメだけ「伝統芸能」というわけにもいかないのではないか。じゃあどういうのがいいんだといわれると困るのだけど^;

○アフガニスタン

 放送大学の「国際政治」第四回のメモ。

かつては中央アジアの要衝・文明の十字路
仏教・ゾロアスター教伝播の中継地点にも

例:仏の背後(不動明王)には炎のモチーフ(ゾロアスター教の影響)

現在に至るまでの歴史的経緯

ナポレオンの中央アジア進出計画

フランスの国力増大のためにイギリスの植民地のインド奪取を狙う
ロシアから中央アジアに南下してインド進出を狙う→ロシアに敗北して失敗

ロシアの南下政策

ロシアがナポレオンを破ったあと、ナポレオンと同じことを狙う。
インドを目指して中央アジアへ進出
イギリスはインドから北へ進出

このロシアとイギリスの対立を「グレート・ゲーム」という
アフガンは、ロシアとイギリスの領地の緩衝地帯として設定された国家
イギリスが勝手に国境を決めてできたため、多数の民族が混在する国家になってしまう

パシュトゥン人
 パキスタンと国境沿い(ディランド・ライン)で分断されてしまった民族
 アフガンのパシュトゥン人はパキスタンのパシュトゥン人と国を作りたいと思い、そのせいで紛争・対立が生じる

アフガン戦争勃発〜9・11までの経緯

アフガン王が軍の近代化のための援助をアメリカに要請する
          ↓
パキスタンとアフガンはパシュトゥン人の問題で仲が悪かった
          ↓
アメリカは当時パキスタンを支援していたためアフガンの要請を断る
          ↓
アフガンの王様はソ連の援助を求める
          ↓
ソ連がアフガンを支援。アフガンからソ連に留学生が送られる
          ↓
留学生、ソ連で共産主義に教化され、帰国後に秘密裏に組織を作る
          ↓
1973年 クーデター発生、アフガンは共和国に
          ↓
1978年 共和制から共産主義に
          ↓
      国民反発、共産主義政府はソ連に援助要請
          ↓
1979年 ソ連がアフガンに軍事介入
          ↓
アメリカ側は「ソ連はアフガンから中東・ペルシャ湾を狙ってる」と警戒
          ↓
1980年1月にカーター大統領がソ連に警告
          ↓
アメリカ・アフガンのゲリラを訓練
世界各地のイスラム教徒が集まり、アメリカの武器と訓練を受けてアフガン入り
アラブ・アフガンズと呼ばれる(ビンラディンもその一人)
          ↓
1989年  ソ連軍の撤退
          ↓
アラブ・アフガンズがテロを起こし始める
世界貿易センター爆破、9・11テロ

アメリカの安全保障上の課題は「テロとの戦い」と「核不拡散」だが、アメリカはアフガンのためにアラブ・アフガンズをつくりテロ組織の土台を作った。そして、パキスタンの核開発を許したことで核の技術が流出してしまっている。現在の安全保障上の課題は、アフガン関連の政策によって生じている部分が大きい。


4/22 dreaming in the dreamlike world

ゆめの世をゆめでくらしてゆだんして
ろせんをみればたつた六文
木喰上人

なぜ六文かといえば三途の川の渡し賃が六文なわけでして。

○闇市の終わりの始まり

ネット規制についての論点整理

 法規制にせよ自主規制にせよ、今後5年〜10年くらいかけてネットでは規制が体系化されていき「表」と「裏」の世界の棲み分けができていくことになるというのが穏当な予測かと思います。それによってネットはより使いやすく便利になり、同時にどこかつまらないありふれたものになっていくのでありましょう。

 焼け跡に立ち起こった闇市のようなものだったのやもしれません。闇市の猥雑さやエネルギーは確かに魅力的でありますが、それが拡大発達するにつれ法律が整備されていき、普通の「商店」「市場」になっていくのが常です。それに逆らおうとするものの末路は、押井守が「ケルペロス・サーガ」「立喰師列伝」や「劇場版パトレイバー」などで繰り返し描いているとおりではないでせうか。

○ゆめのような景色

Discover Foam City

 久々に心にしみる映像でした。静かな音楽もいい。

○新装

平均律

 青い蝶って映画であったな。

○アニメ「仮面のメイドガイ」第三話

 好調。バカな子は可愛くていいですなあ。


4/21 looking hell in the air

ほのほのみ虚空にみてる阿鼻地獄/行方もなしといふもはかなし(源実朝)

 ご苦労の多い人生だったからね実朝さんは^;今、この人の全集探してるところなのでその内まとめて読みたい。この歌はインパクトあるし余韻も見事。

○アニメ「コードギアス反逆のルルーシュ」第3話

 エンターテイメントとして飽きさせない仕掛けがたくさんあって、とてもよくできてるなあ、と感心しきり。近年のアニメの脚本の中でもトップクラスの技術的洗練度ではないか。投入されている情報量・作り手のアイディアや仕掛け・設定等が他の作品に比べて段違いに多く、しかもそれを非常に手際よく視聴者に提示していく。富野作品のように「情報にワザと「分からない部分」を作り、後でわからせていく」という形ではなく「適切なタイミングで適切な情報を無駄なく供給していく」というスタイルを崩さずに、これだけ密度の濃いものを作れるというのは立派。

 「捏造・改変された歴史や記憶との戦い」「生活が監視されれている日常から身を守るために自分を偽ること」「世界や人間に対する危険な衝動を隠し持ちつつも穏やかでやさしく楽しい日常生活をすごす」など、かなり意欲的にアクチュアルな要素を取り込んでいる点も注目に値する。

 敢えて難を挙げれば、手際がよく洗練されすぎているが故に泥臭い演出や絵が作れず、そのせいでドラマの盛り上がりに「過剰な熱量」が生じないことくらいだろう。しかし、それも現代的といえば現代的であり、難点というには及ばない気がする。今のところ今季もっとも出来が良いのはこの作品ですな。第一期より良い。

 特に「危険な衝動と穏やかさや優しさが同居している」という感性は、「スクールデイズ」「ひぐらし」と「ARIA」を同時に消費し、嗜好する現在のアニメファンの気質を考える上で重要なものであるように思います。管理人自身は正直、その原因を言語化・分析できないでいるのですが「コードギアス」がそこら辺にどういう答えを出してくるのか注目したいところであります。

 上述の実朝の短歌を見れば分かるように、こうした感性自体は決して新しいものではないのですが、何が今のアニメファンを、こうした感性にドライヴしていってるのかが良く見えないところがあります。個人的には「人の命がやたらと安い」ってあたりがポイントではないかと思っているのですが(コードギアスでも、この感覚は非常によく出ている)、それだけではなんともいえないですし。難しいところです。


4/20 dreaming kissing raining spring

口づけも夢のなかなり春の雨(小津安二郎)

 映画だけでなく俳句もうまいなあ。
 タイトルはingで統一して英訳したものだが英語で韻を踏むというのは難しい。英語の韻を踏む文章で惚れ惚れしたのは、エミネムの「Till I Collapse」のイントロ。

Cause sometimes you feel tired,
feel weak, and when you feel weak,
you feel like you wanna just give up.
But you gotta search within you,
you gotta find that inner strength and just pull that shit out of you
and get that motivation to not give up and not be a quitter,
no matter how bad you wanna just fall flat on your face and collapse.

 特に最後の行の一挙に韻を踏んでくところが燃え。「matter」「bad」「flat」「collapse」と畳みかけていくんでめっちゃ盛り上がります。

○アニメ「紅」第三話

 文句言いつつも見るんかい^;

 電車のシーンにリアリティを感じない管理人は世間知らずなのかしら。最近の若い子は管理人の頃に比べるとだいぶ行儀よくなってるかなとか思ってたんだが。

 台詞の力を生かし、会話劇としての面白さや微妙なニュアンスを読ませようと工夫している努力は買えるし、近年のオタク作品の潮流をきちんと見極めたものだと思う。ただ、作り手が結局のところオタク作品としてのツボを意識的にはずしてしまっているので、色々な努力が生きてこないなあというところがある。まあ、若い子はもう「オタク作品としてのツボ」みたいなものにそれ程こだわりがないからかまわないんだろう。


4/19 not clear not dim

照りもせず曇りもはてぬ春の夜の/朧月夜にしくものぞなき(大江千里)

天気が悪いと洗濯物が乾かなくっていかんですよ。

○アニメ「マクロスF」第三話

 第三話だが作画も大きく崩れることなく、なかなかに好調。戦闘シーンも第1話ほどではないにせよ、なかなか見せるものになっている。吉野氏による「マクロスの基本を外さない」堅実なシナリオが効いている。分かりやすいシチュエーション、ドラマは予定調和で意外性がないが、マクロスに関してはこれで良いと管理人は思うので無問題。水準の高い仕事を継続しているサテライト様に拍手を。

○アニメ「ゴルゴ13」第二話

 こちらもなかなか面白い(2倍速で見てちょうどいいレベルではあるが)です。舘ひろしの声が思っている以上に合うし、シナリオもさすがに手堅くできてる。下手に若い子を取り込もうとして上滑りするようなことなく、「好きな人が見てくれれば」という原作ベースな背伸びしない作り方をしているのも吉。マクロスFとかぶらなければ継続視聴予定。

○下司な勘ぐり

人気作「コードギアス」未放送映像が流出 ネット配信でミス

 「バンブーブレード」の内部資料流出といい、こうも続くと「ネットで手っ取り早く話題になるために無難な流出事件を起こす」というマーケティングなんじゃないかと下司な勘ぐりをしたくなる。出来がいい作品なので、こういうしょうもないことで話題になるのは残念だが。

 京アニやシャフトみたいに真面目に(?)ネットユーザーと向き合うマーケティングが意外と進んでいないように思うのですが、やはり「そこまでネットに擦り寄ってもどうせ金にならない」ということなのでしょうか。「流出騒ぎで話題を取る」は、大したコストもかからずにネット上で話題になるという方法なのかもしれません。

 ここまで全く根拠なき憶測で話を進めております。

○放送大学メモ 近代ヨーロッパ史第3回 

「18世紀における社会経済の歴史」

18世紀のヨーロッパ

アジア・アメリカ・オーストラリアなどへ進出

1 北西ヨーロッパでの経済成長の開始−持続的な安定成長(1%程度)の実現

・食糧事情の好転(飢饉からの脱出)
 農業革命
 農法などの技術改良・品種改良・家畜の飼育法・干拓・マメ科植物の活用・新作物(ジャガイモ革命)・穀物収穫率の改善

 穀物交易が始まる(東ヨーロッパの穀物が北西ヨーロッパへ)
   市場向け農業生産(資本主義的農業経営)の始まり
   農産物が市場で消費され、更に拡散していく

・人口の継続的増加
 人口はそれまで伸び悩んでいた(人口学上の旧制度・多産多死)
 乳幼児死亡率が非常に高かった
 食糧事情、栄養状況の改善・ペストの消滅(原因は不明だが流行が去った)
 都市の発達によって就業機会が増加(田舎の人口が都市に流れても大丈夫になる)

・都市部の変化
 ギルド的な規制の衰退
 国際商業を前提にした生産が始まってくる→プロト工業化・機械制工場の登場(例:時計産業は17世紀後半に確立、機械・分業など時計産業は先駆的な産業だった)→産業革命へ

2 イギリスにおける立憲王政の安定化 

17世紀イギリス
ピューリタン革命ー共和制ー王政復古ー名誉革命
国王派と議会派の戦いに決着がつき、議会派が優勢になり立憲王政が確立
議会が国政を作る重要な核になっていく
グレートブリテン王国による統合(スコットランド併合)
権利の章典によって立憲政治が確立される

18世紀
ハノーヴァー朝の機能不全(国王がドイツ人)によって責任内閣制が成立
内閣が議会に大して責任を持って政治をするシステムが構築される

二大政党(トーリー党とホイッグ党)政治の確立

3 18世紀の啓蒙専制政治

他のヨーロッパ主要国
旧来の特権集団の力が弱まらなかった
だが同時に社会・経済の近代化は求められてきた

経済・社会の近代化を上から進めよう → 啓蒙専制政治


4/18 One of them

○アニメ「図書館戦争」第二話

 パトレイバーを髣髴とさせてよろしおすなあ。キャラをギャグ顔にするところとか「ミニパト」っぽいし。設定はともかく、キャラクターとディテールで楽しませてくれるウェルメイドなアニメとして楽しめそうです。IGはやればできる子。

○アニメ「狂乱家族日記」

しっかりとしたお仕事の第1話ですが安い説教が玉に瑕か。Bパートのテーマ語りなんかいらないから、もっとキャラ立てることを徹底したほうがよかった気がする。ウェルメイドな作品だが、それほど肌に合わないので継続視聴予定なし。

○放送大学メモ「現代の国際政治 − 第3回 アメリカの中東政策」

中東でいちばん重要な国はアメリカ

アメリカの中東政策の歴史的展開

第二次大戦後の中東政策の目標

その1 冷戦期の目標

1ソ連封じ込め
2石油の確保(79年のイラン石油労働者がストライキ→石油危機)
3イスラエルの安全保障

☆この3つの目標には整合性がない

その2 ベルリンの壁崩壊後(89年)

ソ連との競争が必要なくなる

1石油確保
2イスラエルの安全保障

政策目標がこの二つだけになる。ある意味よき時代だった。

しかし9・11でこれが変化する

その3 9・11後の中東政策の目標

1テロ組織の壊滅
2大量破壊兵器(核兵器)とテロとの結合阻止→核拡散阻止
3石油の確保
4イスラエルの安全保障

国内政治と中東の関係

◎イスラエルの安全保障がなぜアメリカの中東政策の目標となるのか?

イスラエル独立宣言時に独立を承認するか否かが問題になった
国務省の反対を無視してトルーマンが即承認
理由:副大統領から昇格したトルーマンは次の選挙でユダヤ人勢力の協力が必要だった

◎ユダヤ人の力

ユダヤロビー
AIPAC−アメリカの中東政策をリード
証拠例
過去アメリカ政府のイスラエル援助の法案が190以上
国連でのイスラエル非難決議における35の拒否権発動

◎ユダヤロビーの強さの源泉

1 高度な情報提供能力(議員がほしがる)と議員とのコネクション
  演説原稿の作成、法案の作成などに助力
  2007年、議員と2000回以上の会合を持ったという記録も

2 強力な資金調達力、資金を議員に効果的に配分
  全米トップの大富豪の34%がユダヤ人

3 全議員を親イスラエル度で得点化
  非友好的態度を持つ議員には態度を改めるように要請
  改めないものの選挙区に「刺客候補」を送り込む
  それによって、現在ではユダヤロビーに逆らう議員は少数

4 ユダヤ系の影響力
  上院・下院のユダヤ系議員をあわせると米議会で20%の影響力を持つ
  大統領選挙人(538人)の上位10州にユダヤ系の住む州が多い
  接戦になればなるほど影響力を持つ

◎ユダヤロビーはアメリカを支配しているのか?

ユダヤロビーはたびたび敗北を味わってきた。オールマイティーではない。

例:イスラエル製ファルコン戦闘機の中国への売却をアメリカが許さなかった

ユダヤロビーはアメリカの政治を規定する複雑な要素のひとつにすぎない。
国際政治すべてを動かす強力な要素でもないし、かといってユダヤ人が宣伝するような微々たる影響力ではない。ちょうどその中間に位置する影響力を持っているといえる。

◎キリスト教原理主義とユダヤロビー

聖書を字義通りに解釈する
アメリカの伝統的価値観の崩壊→宗教回帰
アメリカ3億人の中で4割ほどがキリスト教原理主義

政治とのかかわりの歴史過程

70年代後半
アメリカで保守主義運動を再興しようとしていた人々が宗教右派をとりこむことを狙う
中絶問題を取り込むことで政治に引き込んでいく

80〜90年代
イスラエル支持という政治目標が明確化

原理主義勢力は強いが、しかしそれもアメリカ政治を動かす複雑な要素のひとつ
アメリカの政策決定過程は複雑であり、ユダヤロビーやキリスト教原理主義勢力がそれを牛耳るということはできない

☆おまけ:日本とユダヤ人
 日露戦争
 日本の戦時国債を打っていた高橋是清をジェイコブ・シフが支援。
 なぜ支援してくれたのか?−ロシアのユダヤ人はこの頃迫害され、移住を余儀なくされていた
 アメリカの金融業界にとっての新市場として日本を見出した。


4/17 how do you win

○ヨーロッパのサッカー記事は説教臭い

ヘタフェのように負けるか、バルサのように勝利するか

>>「人生で大切なことは勝つことだけではなく、どのように
>>勝つか、あるいはどのように負けるかだ」と。

 ただ勝てれば嬉しいじゃないかっていう向きもあるのですが、それは最初のうちだけで、それだけでは心底喜べないというのは事実であります。自分の望む「勝ち方」で「勝つ」ことを目指さないといかんですなあ。難儀ですが。

○ニューズウィーク2月6日

 図書館で借りてきてるので日付がかなり古いが。

 ピーター・タスカの書いてる「日本株低迷は自業自得だ」が目を引く。「政治家、官僚、企業、マスコミ……誰もが株主と消費拡大に背を向けるばかげた風潮が「逆バブル」を生み出した」だそうですよ。

 早すぎる金融引き締め、財政の健全性にこだわりすぎる財務省、規制強化によるコンプライアンス不況(サラ金・食品など)、マスメディアの悪影響、株主至上主義への反感などが経済を悪化させているんだといった指摘自体は首肯すべき所もあるんだが、アメリカ人に言われると、どうも「お前らがそれを言うか」的な納得いかねー感が^;

 さらりとJパワーを「民間企業(で上場している会社)なのに政府の強い影響下にある」会社の代表として指摘していたりして、昨日今日あったことを思い起こさせられる。

 最後はかなり感情的というか大雑把な話になっていきます。

>>日本の問題は経済より根が深い。消費を嫌う禁欲的な政策、
>>メディアの起業家たたき、もの言う株主への拒否反応−ど
>>れも同じ病気の症例である。今の日本は金融ビッグバンと
>>構造改革に背を向け、資本主義への不信感をむき出しにし
>>ている。

 資本主義への不信感って、我が国の商売好きはよくお分かりでしょうに。だいたいマトモじゃない起業家とかマトモじゃない株主とかがいるのも事実なわけで、そういうのをなんとかしてよ、というのは別に「資本主義」云々の問題じゃない気もするのですが。たしかに「マトモじゃない」ものに過剰反応しすぎってのはありますけどね。

○ネオリベ万歳なんて言えるほど

第17回 公共事業としての軍事(1)

>>ここで認識しておきたいのは、この矛盾はたんに日米
>>関係にのみ当てはまることではなく、いまの「新自由
>>主義(ネオ・リベラル)的な」といわれる資本主義の
>>あり方そのものにも当てはまることである、というこ
>>とだ。現場で働く人に対しては、やれ競争だ、自己責
>>任だ、能力給の導入だ、ということが言われながら、
>>それをマネージメントする統治権力の側では、自由競
>>争とは正反対のコネが支配している。いまの資本主義
>>は実際には縁故資本主義だといわれる理由がここにあ
>>る。これではいくら「時間活用術」を使って努力して
>>も、むなしいだけだろう。

 どうしたって現状では「ロクでもないルールのゲームだな」と思っちゃう人が多いわけですよ。ここら辺の問題をどうにかすることを考えないまま単純にネオリベ万歳とか言ってる人たちの前向きさには、正直管理人もついていけんものがあります。「他にどんなルールのゲームがありえるっていうんだ、これしかないんだから我慢しろ」としかいえないのは頭悪いわけです。「たしかにロクでもないゲームだけど、やってるうちにバージョンアップされていくよ」という見込みが必要なわけでしてね。

○アメリカ様はといえば

バーナンキには「景気後退」以上に悪い未来が見えている

>>クレジット・デリバティブのリスク評価が大幅に訂正
>>される(実態に合ったものになる)と、先ず、各プレ
>>ーヤーが持つポジションの評価損が莫大なものになる。
>>加えて、このマーケットから手を引くプレイヤーが出
>>て取引が縮小し、大型金融機関を潰さずに済んだとし
>>ても、これが与信全体の縮小につながるだろう。こう
>>したことがこれから起こるとすると、来年、再来年と
>>いう単位で見ても、かなりの悪影響が新たに発生する
>>可能性が高い。バーナンキ議長には、こうした将来像
>>が見えているのではないだろうか。

 景気が今年後半には持ち直すという予想が結構出てた気がするんですが、事態はもう少し大変だよということらしい。春は遠いのでありませうか。

「時価会計見直し」論まで出る、サブプライムの痛手の深さ

挙句の果てにルール変更でどうにか誤魔化そうとするってあんた……まあ、この恥も外聞もなく自分の得になることを考えられるところがアメリカの強みだが。

The Economist 4月12日号 世界経済 米国の大幅な減速

 こちらも参照のこと。

>>さらに大衆主義と保護主義も忘れてはいけない。すでに米国
>>では10人に8人が自分たちの国は間違った方向に進んでいると
>>考えている。不況が長引けば、大衆の怒りは非難のスケープ
>>ゴートを探すだろう。実際には自由貿易は米国がさらに厳し
>>い景気後退に陥るのを防ぐ一助になっているにもかかわらず、
>>ブッシュ大統領はコロンビアとの貿易協定に議会の承認を得
>>るのに苦戦している。

 自由貿易と公正取引も資本主義の一部だと思うんですけどね。背を向けていいのでせうか。


4/16 Efficient machinery replaced manual labor

DUO3.0(まだ終わってないのかよ)の例文。
意味は「効率的な機械が肉体労働に取って代わる」でして。

○352万人

352万人分の労働力に 次世代ロボットの普及で

>>働き手の減少で25年時点では427万人分の労働力が不足すると
>>予測しており、ロボットの普及でその約8割がカバーされる形となる。
>>少子高齢化対策としての役割も期待できそうだ。

 本当だとすれば少子高齢化問題の半分とはいわないまでも、今言われている「少子高齢化は大変だよ」論の3分の1くらいは眉唾ものになってしまうのではないか。たとえば「少子高齢化で労働力が不足→移民が必要」論とか、一気に説得力が怪しくなる。「少子高齢化で労働人口が減少する国に未来はない」という粗雑なロジックも同様。

○本「経済学思考の技術」(飯田泰之・著)

 経済学者の「考え方」の基本ルールを説明し、その後、日本の不況を考えることで実際にその「考え方」をどう使うかを具体的に教えてくれる好著。10個の「考え方のルール」が説明されるのだが、その中で特に感心したのをいくつか挙げると、

○個人がアクセスできるフリーランチ(タダ飯・楽して儲かる方法)はない
○グロス(総額)だけではなくネット(純額)で考える
○名目変数と実質変数には区別が必要
○正しい単純化・正しい論理構成・正しいデータ確認から導いた結論は常識に勝る

 といったところ。

 特に「グロスとネット」「名目変数と実質変数」の区別はしっかりしないとダメだなあと反省する。あと最後の「正しい単純化・正しい論理構成・正しいデータ確認から導いた結論は常識に勝る」というのが難しいんだよなあ。どうしても自分の実感とかモラル感覚みたいなものにひきずられる。

○本「ウェブは資本主義を超える」(池田信夫・著)

 文体こそ攻撃的だが語られる内容は論理的で一貫性があるので読んでいて気持ちが良い。

 放送・通信・著作権などの問題について「経済学のルールから考えた現状の問題点と、考えられる解決策」を論じていく形で分かりやすい。経済学の基本原則を現実に適用するツールとしてどう使っていくかを目の前で見せてくれて、「なるほど、こういう風に使ったり考えたりすることができるんだ」と理解できる。それが「正しい」かどうかはともかく「基本ルールに基づいて現実の事物を分析し・解決策を出す」という作業過程の記録として勉強になる。

 特に放送・通信分野についての解説は元NHKの人だけあって具体的記述が多くて納得感がとても強い。勉強になりました。

○アニメ「仮面のメイドガイ」第2話

 肩の力を抜いて見るには最適なアニメ。バカでベタなだけでは面白くはならない。一生懸命手をかけてバカでベタなことをやってほしいのだ。このアニメは、それができておりすばらしい。作画的にも穏当なレベルを維持しており、海外下請スタッフの実力を感じさせる作品でもあります。継続視聴予定。

○マクロスFを早速

 見逃してしまった。クリスタルなんとかも時間帯ズレてて録画失敗するし。本格的にネットの配信で見るようにしようかなあ。

○イタリア総選挙

 ニューズウィークの期待する展開にはならず、ベルルスコーニ勝つ。

○国際秩序についての見方・メモ

 ついにパソコンにテレビチューナーを導入しまして、おかげで放送大学の面白そうなのを録画して二倍速で見る、ということができるようになった。これは「国際関係・第二回」の講義を二倍速で見たときのメモ。

1 国家を中心にして見るリアリズム

ホッブス・スピノザ
国家間の関係は無政府状態だが、国家によって国内の自然状態は解消される

グロチウス・バッテル
国家間の関係においては紳士協定的な法律に従うべき

ホッブス・スピノザの考え方はドライで残酷に見えるが、世論が戦争に積極的・政治権力者が慎重な場合はこの考え方のほうが平和を作るかも

グロチウス・バッテルも「国家が主体」という考え方ではホッブス・スピノザと一緒。

2 市民を中心にして見たリベラリズム

ウィリアム・ペン
自然状態の脱却・非暴力・人間は元々平和主義

イマヌエル・カント
市民は戦争によって犠牲を受ける
王様は戦死しない、市民は戦死する
犠牲になりやすい人・市民が権力を握れば平和を選択するだろう

ジェレミー・ベンサム
功利主義
カントの議論を体系化

カント・ベンサムの考え方の問題点→共和主義の抱える問題
市民の政府は防衛のために戦争をする。共和主義のほうが市民は戦う
自分の命のために戦うほうが一生懸命戦う(マキャベリ)
実例:フランス革命、ナポレオン戦争

マルクス
国内には階級対立がある。国内は闘争があり無秩序である
だから対立・闘争が国際関係においても展開され無秩序になる
闘争は継続する(マルクスはその後に共産主義社会というユートピアを提示)

どの考え方も正統性がはっきりしないまま、現在にいたる


4/13 disheveled black hair

○ガス・ヴァン・サントの新作

パラノイドパーク公式サイト

 ガス・ヴァン・サントにクリストファー・ドイルとはまた好みの面子そろえてくれたなあ。見に行きたいが公開館が少ない。

 「マイ・ブルーベリー・ナイツ」も早く行かないと上映終わってしまう。

○こちらもうかうかしてると終わってしまうな

アーティスト・ファイル 2008―現代の作家たち

 佐伯洋江氏、さわひらき氏辺りの作品が面白そうなので現物見てみたいと思っているがなにぶん遠い。

 佐伯洋江氏の作品はこちらでも見られる。

○最近の遺伝子組み換え技術は凄いんですなあ

遺伝子組み換えで誕生した最新の生物トップ10

蚊を絶滅させるための「遺伝子組み換え蚊」

○被害妄想はデフォ

バーチャルリアリティを使った調査では4割の人が被害妄想的傾向あり

防衛本能みたいなものと関わりがあるのでせうか。

○本「すぐわかる日本の美術」「すぐわかる琳派の美術」

 タイトルからして安直そのものですが、図版が多くないものは読む気しないので。

 ザッと眺めていった感じでは、伊年印の「草花図襖」や尾形光琳の「燕子花図屏風」「竹梅図屏風」、長谷川等伯の「松林図屏風」、円山応挙の「保津川図屏風」あたりがカッコ良かった。東京国立博物館に所蔵されてる作品が多いので、近い内に見に行きたい。

○本「よくわかる百人一首」

 達者だけど毒に薬にもならないヌルめの歌が多いという印象。印象に残ったのは女性の恋歌が中心。

長からむ心も知らず黒髪の
乱れて今朝は物をこそ思へ
待賢門院堀河

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば
忍ぶることの弱りもぞする
式子内親王

あらざらむこの世のほかの思ひ出に
いまひとたびの逢ふこともがな
和泉式部

 三つともソウルフルで良いのだが、基本的に「待つ女」の恨み節なので今読むと少しリアリティがないところがある。和泉式部怖い。

 男で優秀な恋歌を詠んでるのは権中納言敦忠くらいか。

逢ひ見ての後の心にくらぶれば
昔は物の思はざりけり
権中納言敦忠

 完成度が高いのは紀貫之・紀友則。

久方の光のどけき春の日に
しづ心なく花の散るらむ
紀友則

人はいざ心も知らず古里は
花ぞ昔の香ににほひける
紀貫之

 二人とも達者な癖にイヤミやクドさが全然ない。語感の良さも見事。

 語感の良さという点では小野小町もいい。

花の色は移りにけりないたづらに
わが身世にふるながめせし間に
小野小町

 やはり百人一首よりも古今・新古今などに直に当たったほうがいいのかも。


4/12 ordinary record

○経常録

 経常は「日常・平常・通常」等の意。要するに「日常の記録」であります。基本コンセプトは管理人の備忘録です。

○アニメ「図書館戦争」第1話

 キャラクター描写が作画・演出含めてアニメ的で分かりやすく、期待の持てる第1話。

○漫画「Giant Killing」1〜2巻

 「走れないからリアクションサッカーしかできないんだ」という指摘にしみじみ納得。良作。

○漫画「王様の仕立て屋」1〜3巻

 ファッション版「美味しんぼ」ですな。「美味しんぼ」や「ZERO」等、このスタイルの作品は読んでいて安心感がある。ベタなキャラのたたせ方、浪花節なエピソードが心地よい。薀蓄も毎回あってためになる。

○漫画「ヒストリエ」

 岩明均の描く女の子って不思議に魅力あるよなあ。もちろん話も面白いです。惣領冬実の「チェーザレ」と共に連載中の歴史漫画の白眉。

○漫画「少女ファイト」4巻

 賭けバレー騒動やラブコメ展開など、少し作者に余裕が出てきた感じがある。

○漫画「Real Clothes」1〜3巻

 Youで連載中のデパート社員漫画。「プラダを着た悪魔」日本版とでもいうべきか。主人公が婦人服売場担当→マネージャー→バイヤーと職業が色々変わっていくので、それぞれの仕事の様子とかが分かって興味深く、面白い。ただしドラマのメインは「仕事と恋愛・家庭の両立」という現代女性の葛藤。管理人は職業モノとしての薀蓄・エピソードに比重を置いてほしいと思ってしまうのだが、メイン読者層の興味はそれよりも「女の人生プラン」のほうなのだろう。

○Newsweek4月9日

 短い記事だがPeriscopeの「挑発に乗らないイスラムの異変」が面白い。自爆テロを促していた指導者が、西側の「攻撃」には文化的、法的に対応しろと説くといった「変化」が見られているそうな。あと「ワインのラベルや値札を隠して飲み比べをしてみる」という実験をしたら15ドル以下の100銘柄が、価格の高いものより高評価を受けたそうな。安くて美味しく飲めて結構づくめではないですか。

 欧州関連はイタリアの話。左派のベルトローニと右派のベルルスコーニが大連立を組むことに期待する、という記事。ベルトローニによるとイタリアの問題は市場の閉鎖性と冗長な官僚制度だそうで。どこかで聞いたような話。

 アジア記事は、各国の総選挙で経済成長重視の実務型指導者が選ばれてる話。昔みたいな高度成長の余地はそれ程残ってないけどね、と醒めた見方をしつつ期待するというスタンス。アジア諸国もこれから日本が来た道を歩くことになるということか。特集の「世界経済入門」はさすがにぬるすぎる感がある。